2565年

「すいません、これ何ですか?」

「ああ、これ?。ここ、天橋立でしょ?」
「あの、有名なのあるじゃない?」

「日本三大名所、みたいな?」

「まあそうなんだけど、ほら、股から景色見るやつ、あるじゃない?」

「ああ、股からのぞくやつですね」

「そうそれ。これ、股のぞきの補助器具なんだ」

「補助器具?」

「そう。ほら、普段股から物を見るなんてしないよね。」

「ええまあ。」

「姿勢も不自然で、体勢を崩す。けが人が出るくらいだったから、補助器具を設置したんだよ。」

「確かに変な体勢ですからね。ところで100円入れるところがあるんですけど。」

「そりゃあるだろ、どこの展望台の双眼鏡にも付いてる。」

「でもこれ、別に100円入れなくても、なんか、出ちゃってるでしょ機能。」

「別に、寄りかかるだけでもう股開きが楽にできちゃう、と。」

「股のぞき、ね。ええ、そうだと思うんです。」

「確かに。例えば双眼鏡の方は、100円入れないと見せてくれない。こいつはただ、利用した人の自発的な支払いを期待しているのか、あるいは何か100円を入れる事で特別な機能を発揮するのか。」

「股のぞきの特別な機能・・・。景色がよりきれいに見える、くらいしか思いつかない。」

「何なら、見比べてみたらどうかな?。普通に見て、それから補助器具の方から見て。」

「お金かける分、きれいに見られる気もしますしね、試してみますか。」


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それから550年後

レポーター「ここが京都州で有名なスポット、天橋立跡地です。」

「今はもうその姿を見る事はできませんが、愛されていた景色を見るための儀式が残っています。」

「股から顔を出しながら50mほど離れたお賽銭箱に100ポン(※)を入れるというものです。」

「今日も大勢の観光客が、股から顔を出しながらお賽銭箱に向かっています。」

「慣れたものですね。」






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※ポン
2565年の日本における通貨の単位。
「ニッポン」の「ポン」にかかっている。

2809年

「宇宙時間、10秒です」

師匠との戦いはまだ決着していないにも関わらず、もう観衆はひとりもいなくなってしまった。
すでに2日間、続いているからだ。

だが、動いた。
俺にとっては好転した。

布陣に穴をあけた俺は、一気に追いつめていく。
師匠も粘るが、それはもうどこまで持つか、というくらいだった。


そしてついに、俺の「飛車」が盤の枠を突き抜け、師匠の体を駆け上がっていく。
師匠は身悶えするが、その速度は変わらない。

「宇宙時間、20秒です」

「飛車」は一気に額まで上っていき、そこでくるりと「竜王」に成った。
王手。




どのくらいの時間が流れただろう。

師匠は弱々しいため息をついたあと、小さくうなずいて「見事じゃ」と言おうとする。

しかしその言葉の前に、飛車の陰に隠れていた「と金」がその口に飛び込んだ。

「ふぃほほふぁ」

勝負あり。
師匠も年を取ったもんだ。

2173年

プライバシーの観点から中を透視できないトラベリングケースについて、その中に潜んで密航する事件が多発。
あまりの密航者の多さに、当局は手間とコストをふまえ、恐るべき判定方法を採用した。

それはトラベリングケースの隙間に長いハリを刺し、抜いたときに血のりが付いているかどうかというもの。
非人道的だが、気づかないうちに人口が倍になってしまっているという現状をふまえ、国でもその指導には踏み出せないでいるのが現状である。

当局ではこの判定法「からあげできたかな」について、その残酷性もアピールし、密航をやめてほしいと訴えている。

例のパラドクス。

もう43年も前にもなるか。
僕は不思議な体験をした。

といってもせいぜい1秒くらいの間。

どこからともなく「ある時間を告げる声」を聞いた。
それだけ。

ただ、気になるのはその内容「2034年11月2日16時4分」ではなく、どちらかというとその声が自分のようだったということだった。




そして今、2034年11月2日16時。
あのときの体験の全貌がわかった。

あの声は過去へ飛んだ、僕自身の声だったのだ。

実験段階のタイムマシンに乗って過去へ行く。
時刻を入力して過去への移動中の今、そのことに偶然気づいた。

それまで、あの不思議な体験のことなんて思い出さなかった。
偶然に、実験の時刻として「あのとき」を選んだのだ。



僕は告げたんだ。
過去の自分に、タイムマシンに乗り込んだときの未来の時間を。

理由はひとつだろう。
「お前はその時間に、ここに戻ってくるんだぞ」だ。

本当はそう言いたかったんだろうが、タイムマシンの性能なのか、事故でもあったのか。
時刻しか告げられなかった。


そして僕が今何より感動しているのは、あの体験のことを「偶然」思い出したことだ。

どうも僕はこのタイムトラベルで、過去の自分に今の時間を教えることになる。
そのことをタイムマシンに乗り込む前に思い出してしまっていたら、未来の自分には申し訳ないが、作為的に時間をずらしてしまったかもしれない。

それが、タイムトラベル中の今、思い出した。
もう行き先の変更はできない。



これほど過去の自分に告げることが明確なことなんてないだろう。

思い出した偶然と言うべきことが見つかったこと。
あの日の不思議さが、タイムトラベルの醍醐味であることに気づけたこと。
これらは、僕を強く感動させた。

タイムトラベラーがトラベル真っ最中に、時間を止めたいなんて思うとはね。

2132年

近年問題となっている「攻撃性香水」の対抗する新薬について



攻撃性香水とは、従来の香水に「強力な媚薬効果」を持たせたものです。

媚薬は人類のテーマとも目されるほどその研究が盛んなものでしたが、5年前に完璧な媚薬効果を持つ物質が単離され、強力な媚薬が女性側、男性側ともども開発されることとなりました。

しかしその強力さゆえ、ゆきずりの恋が多発、社会問題にまで発展しています。

それを受けて3年前に我が社が開発したのが「対香水性香水」です。

これは「攻撃性香水」の媚薬成分に結合し、その効力を押させる働きを持つ粒子を含んでいます。
よって、香水に惑わされることがなくなります。

この機能により、商品は製造が追いつかなくなるほどの人気商品になっています。


しかし問題が発覚しました。
こちらをごらんください。

我が社3年間の結婚した人の割合です。
4年前までより3から4割、今年に至っては5割低下しています。

ここから推測されることは「対香水性香水」は人間本来が持つフェロモン、あるいは魅力自体すら減損させている可能性です。
そのような効用は商品としてはうたっておりません。

これが現在の問題です。
いかがしましょう。




社長「なんだ。むしろ売り口が増えるじゃないか」

効果音

「彼の乗っているエレベーターがこの階につき、戸が開いた」

「がらがらがら」

今聞いていた何かで、実際そう言われていた。

今のがらがらがらも、あるいは電話の「ジリリリリーン」。
灯りを消すとき、紐を引っ張る仕草など、昭和を惜しんだ「面白いでしょポイント」を仕込むのは、既に行われていることも手伝って、なかなか勇気のいることだ。

しかし僕はこれに弱く、楽しくなってしまう。

いつだって戸はがらがらがらって音を出してほしいし、電話全般は黒電話を師と仰いでもらいたい。
スイッチのついた機器は全て紐を引っ張る式の方が面白いじゃないか。



今後これらが取って替えられるとすると、どうなるのだろう。

現在の多くの戸は音もなく開閉するし、電話が発する音は多様だ。
スイッチを入切する動作は指先一つだからこじんまり。


残念だ。
新しい音、雰囲気を表す言葉を作るのにも、それではすぐ足らなくなるだろうし、そもそもそれに汎用性を持たせるには人の認識能力にも多様性がありすぎている。

これらのものには将来「がらがらがら」や「ジリリリリーン」以上の表現アイテムが手に入れられる可能性はないのである。


この残念さは、ちょうど扉や電話に相当するもの、手動で操作する必要のある機器が全くなくなる未来まで、続く。

2432年

テレビに反応し語りかけてしまう事。

古人曰く、人を見、人を聞き、人と関わる事テレビでは足らず。
彼を見た人々の嫌悪感甚だしく、友人知人あらゆるものを失い。
しかし当人笑みこぼれる始末。


ビックリマンのパッケージ模様からレアカード封入品を探そうとする事。

古人曰く、レアごとは全てに共有な割合であるとする。
また、多くの商品が使用済みのようになり、店員甚だ迷惑。
しかし当人笑みこぼれる始末。


個室トイレに入っている人に絶えず話しかける事。

古人曰く、そっとしておくなれど聞き耳を立てていることも悪。
自身へ回帰した時のことを熟考する事。
しかし当人笑みこぼれる始末。


目薬をした人の近くにあるティッシュペーパーをすべて移動する事。

古人曰く、弱者をだます事この上なく駄目。
むしろ両手にティッシュを持ち事を待つ姿勢を示す事。
しかし当人笑みこぼれる始末。


古人これを四悦と呼び、強く戒めるもの也。

海抜

「完成間近の東京スカイツリーをもっと高くするため、温暖化を防いで海水面を下げましょう」

そんなCMが昔、流れていたそうだ。

あれって海抜で測っているんだっけ?。
海水面が下がるかどうかもよく分からないが、どちらでもいい。


海面の急上昇が起き、そこらは大海原になってしまった。

こうなっては塔の高さなんてものに興味を持つ人間なんておらず、そもそも人間が少ない。
俺は海水を飲んでも根性で塩分を排出、浸透圧を一定に保ってはいるが、それもどこまで続けられるか分からない。


それにしてもスカイツリー、なんて名前だ。
今ではこのてっぺんで手を伸ばすのと、ボートから手を伸ばすのとで、空までの距離はほとんど変わらないだろう。
おごった名前だ。



バベルの塔という話を思い出した。
神は塔を破壊することで、人々におごりを気づかせた。

今度は違う。
神は塔の高さを奪うことで、人々に何を気づかせたかったのだろうか。




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東京スカイツリー パンフレット予想

「高いことは、いいことだ」

2125年

●スーパースーパーベースボール実況風景

「さあピッチャー大森、振りかぶってストライクを投げましたーストライク!!」

ルールブック


●ジャパネット風景

お振込み手数料、アトム便料金はジャパネットたかたが負担いたします。


●クッキング風景

3分クッキング。今日は冷蔵庫のあまりものから金を精製します。


●お化け屋敷風景

ちょっと死ぬ。


●空港風景

アトムたちが順番待ち。

2120年

スーパースーパーベースボール・ルールブック


アウト編

・ノーバウンドで打球を捕球すると、アウトとする。

・バットで意図的にボールを切断した場合、アウトとする。

・駆け抜けたとき、ベースを粉みじんにしたら、アウトとする。

・打球その他で観客に被害を与えた場合、ツーアウトとする。

・被害を最小限にするよう心がける。


ホームラン編

・ヒットの瞬間にボールが破裂した場合、その一部が地面に接したときのみ、ホームランとする。

・観客席にノーバウンドで打球が入った場合、ホームランとする。

・打球が軌道上に乗ったあるいは超えた場合、ホームランとする。

・野手が2日間戻ってこなかった場合、ホームランとする。

・被害を最小限にするよう心がける。


ピッチャー編

・危険球を投げた場合、刑期が発生する。

・あくまで1打者に対して、ストライクを3つとることを目的とする。

・曲げるのは上下左右ともに70度までとする。

・アンパイアに被害を与えた場合は、無効試合とする。

・被害を最小限にするよう心がける。





追記
本当のルールブックは、どんな風に書かれてるんでしょ。
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