綿毛考察 2

図書館で綿毛について調べていたところ、頻繁に「はふり」「綿毛のはふり」という言葉の出るページがあった。

「はふり」というのは聞きなれない言葉だが、確か神事に携わる職のことだったはず。

綿毛とそれには、どんな関係があるのだろう。
興味を抱いた俺は、さっそくそのページが指し示す場所に向かってみることした。



兵庫県太子町。
紹介されていた住所は住宅街の一角だった。

大した連絡もせずに来訪した俺を出迎えてくれたのは、本にも載っていたじいさんだった。



俺:
「はふり」というのご存知ですか?。

じ:
「は、なんだそれは?」

俺:
ええと、「綿毛のはふり」とかいうやつなんですけど。
ほら、本にも載ってる。


コピーを見て、じいさんはひざを打った。


じ:
ああ「綿毛のはふり」ですか。
知ってますよ。
毎年たんぽぽの綿毛が見られると、行われるんです。

俺:
どういったものなんですか?。

じ:
まあ、なんですな。
人生の教訓を学ぶための行事とでもいいますか。


何か神事などとは違う気もしてきたが、とりあえずお願いしてみた。


俺:
それって今、見せてもらえます。

じ:
いいっすよ。


じいさんが綿毛を捜しに行っている間、綿毛が庭にたくさん落ちているのを見つけた。
ここで「綿毛のはふり」をやっているのだろうか。


じ:
戻りました。

俺:
ではさっそくお願いします。


と、突然じいさいがたんぽぽの綿毛を口の中に入れた。
あの、丸い形状を壊さないようにか、大口を開けて。

あっけに取られている俺の前で、爺さんはボールか何かをほおばったような顔で、たんぽぽの茎だけを出していた。

して、これからどうなるのかと見ている俺に向かって、大声で叫んだ。


「ふぃふぃほ!!」


たくさんの綿毛がじいさんの口から放たれ、いくつか俺の顔に当たった。


明らかに口の中の部品を総動員して「あとかたづけ」をし出したじいさんに「え、これでおわりですか?」。

じ:
そう。これが「はふり」じゃよ。




突然「じゃよ」語を使い出したことが気になりつつも、その意味を聞いてみた。

あらましはこうだ。

飛んでいく綿毛もあるが、唾液に犯され飛んでいけない綿毛もある。
そんななかでも、お前はがんばっていけ。
そんなことを表現しているそうだ。

さっきの「ふぃふぃほ!!」は「生きろ!!」だったらしい。



帰る時、じいさんは本をくれた。
自費出版だったらしい。

俺は自費出版の本でも図書館にあるんだなと感心しながら、東京に戻った。




=====
今年もたんぽぽの季節になった。
もうそろそろやるのだろうか、「綿毛のはふり」。

今回で8回目になるその行事のために、じいさんは練習を欠かさないはずだ。

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