失ってこその最良。

「あなたですか、雌雄同体の研究をなされている方というのは」

「はいそうですけど」

「どんな研究なんですか」

「雌雄同体というと、読んだ通りメスであり、オスでもあるということです。カタツムリやミミズがそうです」

「彼らにはオスとメスの区別がないんですか」

「区別というよりも、両方の特徴を持っているんです」
「そして僕の研究というのは、雌雄同体をメスとオスに分けてみようというものなんです」

「といいますと」

「単純にオスの生殖器官、メスの生殖器官だけをそれぞれ発現させるだけではなく、その行動や長期的な繁殖なども視野に入れての雌雄分離計画になります」

「このことで、多くの生物が雌雄に分かれている理由を、様々な観点から見ることができます。また、少し突飛ですが逆の発想で雌雄異体の種を雌雄同体にすることへの応用も可能かもしれません。例えば畜産業にて雌雄同体の牛を開発できたら、クローン技術とはまた違った生産性向上技術となります」

「すごいですね」

「ただ、単純に「性別のなかったものにそれを与える」という行為に何とも言えない魅力を感じている、というのは否めません。確かにすごいですよね」




その後研究は進展し、メスのカタツムリ、オスのカタツムリが誕生した。
彼らは雌雄同体の個体と同じように食べ、成長し、生殖活動を行い、雌雄だいたい同じ割合で増え。
順調に種を保存し続けるように見えた。

しかしなぜかその繁殖能力自体はオリジナルに比べて劣っており、個体数は増えなかった。





「こんにちは先生。また来ましたよ」

「ああどうも。こんにちは」

「その後の研究はどうですか」

「いやあ。いい感じなんですけれど、一方では行き詰まってしまいまして」

「雌雄異体の個体は取得できたんですが、どうも繁殖能力が低い。生殖活動は行うんですが、とにかく増えないんです」

「それは不思議ですね」

「そう。でも、なんとなく理由がわかりましたよ」

「なんですか」

「ベターハーフって知ってます?」

「いやあ知りません」

「今度調べてみてください。で、何となくわかったというのは、彼らはずっと雌雄同体だったから、それはもしかしたら常にベターハーフと一緒だったとも言える訳です。しかし今度の研究で、僕は彼らを引き離してしまった」

「だから雌雄異体となった検体たちは、永遠にベターハーフを失ってしまったようなものなのかもしれない訳ですよ」

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