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美香はいつも、さりげない。

いつもよりもずいぶん寝坊した朝。

慌てて居間に行くと、ちょうどティファールの電気ケトルのスイッチが切れた。
美香だ。

助かった。
朝食の時間はとれそうになかったから、せめてコーヒーと思っていたんだ。

テーブルにはインスタントの粉が入ったカップが置いてある。
美香だ。

ミルクも砂糖も、ちょうどいい具合に入っている。

思えば、慌ててベッドから起きてスリッパを履こうとしたとき、右足のスリッパに対してちょうど一歩分先に左足のスリッパが置いてあった。

美香は時間のない僕のために、歩きながらスリッパを履けるようにしてくれたのだ。

そして、まだそんなに寒くない。
ちょっと間違えると、これから人の履くスリッパは暖めてしまいがちだけど、美香はそれをしなかった。

廊下には要所要所にワイヤーが仕掛けられていて、廊下を過ぎるころにはパジャマがずたずたに脱げていた。
おかげですぐにスーツを着ることが出来た。

ちょっと間違えると、最先端の技術を応用して、コーヒーを飲んでいる間にでもスーツを自動作製するなんてことをしてしまいがちだけど、美香はそれをしなかった。

それはお金が掛かりすぎるのだ。
美香はいつも、さりげない。

コーヒーを飲み終えた瞬間、カップが破裂した。
おかげでカップを洗わなくても済んだ。

飲んでいる人には一滴もコーヒーを跳ねさせない所に、美香のさりげないテクニックが活きている。

カップの破片を見てみると、どうやら生分解性プラスチックのよう。
これで破片の片付けもしないで済んだ。

というのも、すでに床中に微生物の豊富そうな土壌が敷き詰められているからで、美香の先見性には頭が下がる。


僕自身は美香を、後ろ姿がちらりと見える、そのくらいしでしか見たことがない。
しかしその後ろ姿がまた、さりげないものだから。

本当に美香はいつも、さりげない。
昨日、黒土と書かれた袋を担いでいた後ろ姿を思い出した。




追記
一緒に寝るが、ちゃんとベッドを暖かくしない、みたいなことも考えましたが、安い上に怖いのでやめました。

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