クリーブランド

うそ旅のスタンスについて


「クリーブランド前」
バスから降りると、ニッチョン像の周りに咲いている花がまず目についた。

クリーブランドはオハイオ州最大の農業の町として、アメリカ全土にその名前を知られている。
ニッチョンはその立役者として、町の人に親しまれているのがよくわかる。



1924年、特産品であるホワイトアスパラがまれに見る不作。
そのとき代替品を産み出したのがニッチョンだった。

ニッチョンは普通の男の子だったが、左手がフォークだった。
そのフォークで畑を耕し、わらを運び、そろばんをはじき。

現在、彼が作り出したスナップエンドウはホワイトアスパラと肩を並べるほど、有名。
フォークがすり切れてスプーンのようになってしまっている像は、地元の人の誇りでもあるのだ。



ニッチョン像を横切り、大通りに沿って歩く。
それほど高い建物はないので空がよく見えるし、なんとなくのんびりした雰囲気だ。

そんなことを思っていると、その通りの袋小路に奇妙な三角形の池があることに気づいた。
その角のひとつは噴水が隣接していて、びちょびちょだ。

なるほど。
昼ののんびりした時間を池近くで過ごす人たちにとって、残りのふた角は座りやすい格好のポイントなのだろう。
角には老人が折り重なって座っている。
池の中でも、タニシが角に詰まっていた。

池の横に狭い道がある。
幾何学的な形をした石畳を進んでいくと、民家がいくつか集まっている場所に出た。

ほとんどが茶色をした家材、石で作られているため、その集落全体がひとつに風化物のように見える。
窓やポストがむしろ無理矢理押し込められたように見えて、奇妙だ。

おそらく夕方は、目も開けていられないほどの赤に、染まりそうな場所だ。

その家のひとつから、ナイル側上流に住む民族のおみやげのお面みたいなおばさんが出てきた。
見た目は怖いが、こちらに気づく事なく洗濯物を収納していく。

ふと、こちらに目をやるとにこり、こんなところまでよく来たねと笑いかけてくれる。

でも、ごめんなさい。
これ、うそなんです。

僕は石畳を引き返した。

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